答案のおとし所

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必要的共同訴訟(平成23年司法試験 民事訴訟法)

(2019.08.22)

1 結論

 固有必要的共同訴訟と通常共同訴訟の区別
 実体法的観点を基準としつつ、訴訟法的観点をも加味して、総合して判断する等が一般的な論証であると思います。

 注意すべきことは、2つあります。
 1つは、固有必要的共同訴訟にあたらない場合に、直ちに通常共同訴訟にあたるわけではなく、あくまでも類似必要的共同訴訟(例外)か通常共同訴訟(原則)かのいずれかにあたるということです。そのため、固有→類似→通常の順で検討することになります。

 もう1つは、固有必要的共同訴訟にあたるかを判断する上記一般的な論証が、規範として不十分であるということです。これは、複数の観点から判断するという命題と、A+Bの要件を充足した場合に特定の効果が発生するという規範とは性質が異なり、前者では一義的に結論を導けないという意味です。そこで、❶+❷という(抽象的な)要件を立てるという論じ方もあるのではないかという観点から考えていきます。
 以下では、❶❷要件と実体法的観点及び訴訟法的観点の関係を見ていきます。
 「合一にのみ確定すべき場合」(民訴法40条1項)を必要的共同訴訟といい、これは固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟に分類されます。
 固有必要的共同訴訟とは、❶訴訟共同の必要性(手段)+合一確定の必要性(目的)がある場合をいいます。
 類似必要的共同訴訟とは、❷´合一確定の必要性がある場合をいいます。

2 分析

 まず、固有必要的共同訴訟にあたるかから見ていきます。
 必要的共同訴訟かそれ以外かを判断するメルクマールは、共同訴訟人たるべき者が全員当事者として訴訟に関与して初めて当事者適格が認められるか否かです。すなわち、実体法上の管理処分権を共同行使する必要があるか否かによって決定されます。従来は、ⅰ管理処分権が単独行使できない場合が想定されていました。その後判例では、ⅱ手続法上の考慮で権利関係の帰属主体全員を訴訟に関与させるべき場合が認められてきました(共有地についての境界確定訴訟(S46.12.9)、遺産確認の訴え(H元.3.28)、相続人の地位不存在確認の訴え(H16.7.6)等です。)。
 そのため、ⅰ管理処分権を単独行使できない場合は、実体法的観点から肯定のあてはめを行います。他方、ⅱ手続法上の考慮で権利関係の帰属主体全員を訴訟に関与させるべき場合には、実体法的観点を一応指摘した上で、訴訟法的観点から肯定のあてはめを行います。そして、当然に❷につなげるだけです。❶が充足されれば、固有必要的共同訴訟にしかあたり得ませんし、❶は❷のための手段にすぎませんので。

平成23年司法試験 民事訴訟法設問3
 土地所有者が所有権に基づいて、同土地上の建物所有者である共同相続人に対して提起した建物収去土地明渡訴訟は、通常共同訴訟であるとされています(S43.3.15)。
 上記❶を検討すると、各相続人の明渡義務は不可分債務であり(民法430条)、所有者は各相続人に対して全部の履行を請求し得る(同法436条)ため、ⅰにはあたりません。また、仮に固有必要的共同訴訟であるとすると、争う意思のない者をも被告としなければならず、無用な手続が増え、訴訟不経済であること、建物に相続登記がされていない場合に当該建物の所有者が誰であるかを把握することが困難であること、仮に通常用同訴訟であるとしても、土地所有者は、共同相続人全員に対して債務名義を取得するか同意を得なければ強制執行ができないため、他の共同相続人の権利保護に欠けないこと等から、ⅱにもあたりません。
 次に、上記❷´を検討しても、やはりあたりません。
 そのため、本訴請求は、通常共同訴訟にあたることになります。

 他方、中間確認の訴え(145条)としての共有関係確認の訴えは、固有必要的共同訴訟であるとされています(S46.10.7)。
 上記❶を検討すると、共有権(数人が共同で有する所有権)に関するものなので、ⅰにあたります。
 そのため、本件確認請求は、固有必要的共同訴訟にあたることになります。

 なお、同年の出題趣旨は、Mの本訴請求の認諾は少なくともM自身には効果が生じる(39条)のに対して、中間確認の訴えの放棄は、共同訴訟人LだけでなくM自身にも効果が生じない(40条1項)という点です。このように、異なる規律によって生じる不都合性(Mは中華間確認の訴えについてだけ当事者として残ることになり、「終局判決において、中間確認の訴えが認容され、この判決が確定した場合には、Mは乙土地の共有者であるにもかかわらず、Nに対して乙土地の明渡義務を負うという、実態法上は矛盾した結果」が生じるおそれ)があります。問題文では「判例がある場合にはそれを踏まえる必要がありますが、それに無批判に従うことはせずに、本件での結果の妥当性などを考えて」とある通り、かかる不都合性を解消するための立論が求められているのであり、固有必要的共同訴訟と通常共同訴訟の区別は、その前提論点に過ぎません。

 次に、固有必要的共同訴訟が否定された場合、類似必要的共同訴訟にあたるかを見ていきます。
 類似必要的共同訴訟(例外)が通常共同訴訟(原則)かを判断するメルクマールは、判決効の第三者への拡張の有無です。そのため、❷´判決効の第三者への拡張すなわち、既判力が矛盾抵触する関係にあることを肯定するあてはめを行います。ここでは、❷´の内容は、固有必要的共同訴訟の❷とは少し異なっています。

 最後に、類似必要的共同訴訟が否定された場合、通常共同訴訟にあたることになります。

 なお、上記3つのいずれかの類型にあたるとしても、(単独訴訟を除き)38条の要件を充足する必要があります。

勅使河原和彦『読解 民事訴訟法』240~261頁(有斐閣、初版、2015)