答案のおとし所

(元)司法試験受験生の立場から、再現答案のアップしたり、日々の勉強での悩み、勉強法などについて書いていきます。

【リリース】BEXA「タイパ最強労働法過去問講義(東山 景)」

* 1 本講座の特徴
 本講座のコンセプトは、タイムパフォーマンスの良い労働法試験対策 です。
 本講座の特徴は、以下の4点です。

** ①1問約30分で解説
 実際に私が問題と解くときの手順で設問文や事案を検討し、丁寧に答案設計を行っています。その際、いかなる事実やいかなる誘導から論点を想起しているのかを言語化するように努めています
 答案を書くのは必ず自分1人で行うわけで、他人の答案やその答案を作成する過程の思考プロセスを見ることはあまりないはずです。本講座を利用して合格者の思考手順をシャドーイングを体感し、労働法答案のイメージを持っていただけたらと思います。

** ②ゴールを見据えた勉強法
 インプットからアウトプットへどの時点で移行するのかというのは悩ましい問題です。インプットを入念にやり込み、過去問を大事に大事に取っておいて、試験直前に過去問を解いてみたが解けなかった、1回解いただけで十分に消化できなかったというのはよくある失敗例です。
 本講座は、過去問への早期着手への足掛かりとなるようにとの思いを込めて作成しました。本講座では、問題文の読み方や実際の思考プロセスを追いながら、インプットはどこまですべきか(インプットの対象や当該対象の重要度の確認)、インプットしたことを答案上にはどう表現すればいいのか(インプットした知識の応用)を明確にするように努めています

** ③跳ねる答案よりも、沈まない答案へ
 多くの方が上位答案(跳ねる答案)を目指して勉強をすると思います。それ自体良いことですが、実際の試験においては、いかに平均的受験生と比較して書き負けない答案(沈まない答案)を書けるかが重要となります。
 答案例では、受験生であれば書けなければならない基本的なところは厚く書き、一方で応用的なところや細かすぎるとことは比較的薄めに書き、答案の濃淡を意識しています。また、併せて文字のポイント数を固定して(1行の文字数を固定して)、再現可能な程度の文字数で加点の密度の高い答案を意識しています。

** ④互換性
 先に発売しておりました「タイパ最強労働法速習講義(東山 景)」(旧「労働法速習講義(東山 景)」)(以下同じ。)はアウトプットを意識しつつも、主にインプットの講座でした。
 本講座では、「タイパ最強労働法速習講義(東山 景)」のテキストで規範として掲げていたものを太文字で表現しており、インプットした知識をアウトプットに応用しています。また、考慮要素も「タイパ最強労働法速習講義(東山 景)」のテキストで掲げていたものを念頭に置き緻密なあてはめを目指しています。

* 2 サンプル資料
  Coming soon

新人弁護士が大切だと感じた4つのこと

 早いもので、弁護士として働き始め既に8か月が経過してしまいました。
 短いながらも弁護士として働き、大切だと感じたことについて書いてみたいと思います。

①報告

 依頼者には、適宜のタイミングで報告を行うことが大切です。
 依頼者からのクレームで多いのは「ちゃんとやってくれているのか」系であるように感じます。弁護士のところにまでやってきたのですから、当然に人生の岐路に立っているわけで、事案の進捗に関しては非常に関心が強いといえます。
 期日終了後の報告にとどまらず、日頃から、事案の進捗を報告する必要があると思います。ここでは、事案が進んだ場合に限られず、進んでいない場合にも報告するというのが重要です。
 進んでいない場合には、進んでいない理由を報告するだけでも依頼者の不安を解消させるだけの効果があると思いますし、クレームへの発展を阻止できるでしょう。

②催促

 事案が進まない場合というのは往々にして起こりうる事態であり、進んでいない理由を報告するためには、なぜ進んでいないのかという理由を依頼者にきちんと説明できるようにあらかじめ準備しておく必要があります。
 そのためには、進んでいない原因を解消するための行動を起こす必要があります。具体的には、回答が遅い問い合わせ先や相手方等に適宜のタイミングで催促を入れることがベターだと考えています。
 これは、誤解を恐れずに言えば、依頼者への言い訳の準備といえます。ちゃんとやっているけれどもこういう事情があって進んでいないのですよと。
 これまた往々にしてよくあることなのですが、催促してみると今まで進んでいなかったのが嘘であるかのように翌日回答が来たりすることがあります。先方が事案を寝かせていることもあり得るのであり、要は先方のペースでやってもらっていてはなかなか進まないということです。

③スピード感

 催促も報告も早いに越したことはありません
 報告は、自分の行動が終わった直後に行えば、無意識に早く行うことができる場合が多いです。他方で、催促を早くするのはなかなか難しいように感じています。
 催告に関しては、いわゆるこちらのボールを先方に投げて満足してしまうことが多く、先方に投げたボールのその後は先方のペースになってしまいがちです。先方に投げたボールについて催告を怠っていると、結局のところボールを投げてそのままにしていたのではないかという「ちゃんとやってくれているのか」系のクレームに発展しかねません。
 催告に関しても意識的に早く行うようにすべきであると感じています。
 なお、本題からそれますが、失敗した時も、これまた早く報告するに越したことはありません。失敗の発覚が早ければ早いほどその失敗をカバーするために選択できるオプションが多いといえます。失敗は数えきれない程するので。

④タスク管理

 上記3点は何も難しいことではないではないかと思うかもしれませんが、案件数も増え、各案件の中で問い合わせ先が増えていくと、やるべきタスクの数も無尽蔵に増えていきます。
 現状、最も大切なことは④タスク管理なのではないかと感じています
 個人事件が増えていけば、そのタスク管理を行わなければならないのは、紛れもなく個人事業主である自分自身なのです。
 今後はタスク管理の最良の方法について考えながら仕事をしていこうと思っています。

【リニューアル】BEXA「タイパ最強労働法速習講義(東山 景)」

1 本講座の特徴

 この度BEXAさんからリリースさせていただく「タイパ最強労働法速習講義(東山 景)」(旧「労働法速習講義(東山 景)」)(以下同じ。)について、少しだけ説明させていただこうと思います。

 本講座のコンセプトは、タイムパフォーマンスの良い労働法試験対策です。

 本講座の特徴は、以下の4点です。

①司法試験過去問がベース

 司法試験過去問をベースにしてインプットすべき対象を絞っています。司法試験では重要な論点は繰り返し問われるため、複数回出題がある論点については特に重点的に解説をしています。また、1度出題された実績がある論点についても再度の出題可能性に備えます。
 インプットに引き続いて司法試験過去問を解いていき、早い段階からアウトプットを意識します。本講義では、平成18年~令和3年までの司法試験過去問を取り扱っています←※令和4年分をテキストに追加しリニューアルしました(なお、本講義には令和4年の音声収録はありません。令和4年の解説については「タイパ最強労働法過去問講義」に収録されています。)。

②約11時間で網羅

 他科目に比べて分量が多いと言われる労働法を約11時間で概観します。規範と考慮要素をインプットし、適切なアウトプットができるように備えます。

③体系別の整理

 司法試験過去問は年度毎に順番に解いていく(タテに解く)のではなく、論点毎にまとめて解いていきます(ヨコに解く)。つまり、本講義オリジナルで司法試験過去問を論点毎に分解して、特定論点について連続して解くことで深い理解を促進します

④出題趣旨及び採点実感をフォロー

 インプット及びアウトプットに際して、その都度出題趣旨及び採点実感で明示された思考プロセスや指摘された注意点などについて言及しています

2 サンプル資料

 サンプル資料を公開いたしました。
 ・音声データ(労働法速習講義♯6)
 ・テキスト一部(労働法速習講義♯6対応部分)
 ・判例索引(※一部修正あり)

 ※判例索引については、実際にご購入いただいた際にダウンロードできるものとは一部異なります(実際のものには司法試験出題趣旨又は採点実感で明示された判例等を太字で示しておりますが、サンプル資料にはすべて細字で示しております)。

3 はしがき、その他

失敗から学ぶ司法「試験」の勉強プロセス

1 はじめに
 合格後に、もう1度ゼロから勉強するならどうするだろうかということをふと考えたことがありました。そこで考えた勉強プロセスを書き連ねてみようと思います。
 受験生時代に経た勉強プロセスとは異なります。

2 各プロセス

⑴ プロセス① 入門講座

 どこの予備校でも構いません。全体像をなんとなく掴むことが目的です。完璧を目指すのではなく、なんとなくを目指すというのが重要です。
 この段階で司法試験過去問を解いてみても歯が立たないはずです。解いてみて歯が立たないということを理解するというのもいいかもしれません。

⑵ プロセス② 短文事例演習(基礎の確立)

 演習書(旧司でも可)を活用して司法試験過去問に比して短い問題文の基礎的な問題を解きます。ここでは、伊藤塾でいう問研(問題研究)や論マス(論文マスター(今の論マスは司法試験過去問対策講座をいうかもしれないですが、それではないです。))、アガルートでいう重問(重要問題習得講座)、学者本(商事法務のLaw Practiceシリーズ等)等を想定しています。
 司法試験過去問を解く前提として、短文事例演習を位置付けます。後に司法試験過去問を解く頃には、「あ、これはあの演習書で解いたことのある問題に近いな!」という感覚を味わうことができると思います。司法試験過去問では、応用や例外を問う部分(現場思考を含む。以下同じ。)があり、ここが難しいと感じると思います。しかし、採点実感を見てみると、以外にもその前提となる基本や原則で躓いている受験生が多いことが嘆かれています。基本や原則で躓いてしまっては、その先の応用や例外を問う部分へと議論を展開することができません。必ず基本や原則の知識が必要となります。
 そして、基本的な問題を繰り返し解くことで、基本や原則の知識が当たり前になってきます。
 なお、プロセス⑤ 短文事例演習(網羅性の獲得)の先取りになってしまいますが、理解不足と思われる個所をチェックしておくとよいと思います。短文事例演習も繰り返し解くことがあるということを意識しましょう。

⑶ プロセス③ 司法試験過去問

 プロセス①及び②を経て、本丸である司法試験過去問を解く準備が整ったと思います。
 基本的なスタンスとしては、司法試験過去問には早期に着手すべし!ということです。過去に問われた論点は、再度の出題可能性があります。現に同じような論点が複数回問われています。試験的に重要とされている論点や問題意識、相対的に受験生の理解度が高い論点については、それなりに事前準備をしておかないと相対的に沈む原因となります。そのため、不合格要因を取り除くためにも過去問には早期に着手すべきです。大事に大事に直前期まで解かずに取っておこうなんてことは絶対避けましょう(過去問を1回「解いた」だけでは消化不十分です。)。
 そして、2回目以降も解くべきです(過去問を「潰した」といえる状態にすることが望ましいです。そのためには、繰り返し解いて、設問の問い方・誘導・事実からの論点抽出の仕方、出題趣旨及び採点実感からの共通認識、解説書又は解説講座で解法テクニック等を吸収する必要があります。)。

 ただし、全ての司法試験過去問を「潰した」といえる状態にすることは、現実問題としては難しいと思います。サンプル・プレテスト・平成18年~令和3年の過去問だけで、8科目(9問)×18年分=162問も存在します。しっかり時間を計って起案した場合、300時間を超える時間を確保する必要があります。これに加えて、出題趣旨及び採点実感の読み込みや解説書の読み込み又は予備校の各種講座の受講の時間を考えると…。特にロースクールに通っていると日々の課題を熟すことと並行して2回以上解くということすら難しいかもしれません。さらには過去問依存度が低い科目についていえば、演習不足という結果に陥る危険さえあります。
 そのため、優先順位を考えましょう。例えば、全年度の過去問を「潰した」といえる状態にすべき科目を、過去問依存度が高い(司法試験過去問のみでも網羅性が高い)科目のみに絞る(過去問依存度の低い(司法試験過去問のみでは論点を網羅しきれない)科目は全年度分を潰さなくともよいものとし、演習書でカバーする)という方法があります。
 加えて、相対的に受験生の理解度が高い論点についての理解の精度を高めるために、年度順に解くのではなく、論点順に解く(同じような論点群の過去問を連続して解く)という方法があります(例えば、行政法であれば原告適格につき21年、29年、26年、30年、28年、23年を連続して解く(なお、応用度に対応してこのように年度を入れ替えることもあり得ると思います。)。)。

 解説については、予備校の各種講座を受講するのが手っ取り早いと思います。最近は比較的低価格で購入することができます。金銭的に余裕がないというのであれば、日本評論社の『司法試験の問題と解説』を参考にするのがよいのではないでしょうか。図書館などでも借りることができるはずです。
 再現答案については、辰巳法律研究所の『ぶんせき本』がメジャーだと思います。あとはツイッターやブログなどにも個人でアップされている方がおりますので、こちらを参考にするのも良いでしょう。

⑷ プロセス④ 基本書(入門講座レベルから底上げ)

 司法試験過去問を解いてみると、自分が理解できていなかった部分が明らかになってきます。特に基本や原則について理解出来ていなかったのであれば、基本書に立ち返ってみましょう。それくらい分かっているよと思わずに、固い知識を確立させましょう。
 基本書というくらいなので、プロセス①の前後で読むべきだという考えもあるかと思います。しかし、多くの基本書は司法試験に特化して作成されたものではないため、試験的な重要度がはっきりしません。初学者にとっては、一生懸命多くの時間をかけたのにもかかわらず、試験の点数に反映しないという結果を招きかねません。
 そこで、基本書を読む対象(項目)を絞って、理解の精度を底上げします。基本や原則について理解できていなかった部分や試験的に重要とされている論点や問題意識を掘り下げて理論武装していきます。

⑸ プロセス⑤ 短文事例演習(網羅性の獲得)

 プロセス②では、司法試験過去問を解く前提として、短文事例演習を位置付けました。
 プロセス⑤では、司法試験過去問を「潰した」後に、網羅性を高めるために再び使用するものと位置付けます(過去問依存度の低い(司法試験過去問のみでは論点を網羅しきれない)民法・商法・民事訴訟法・刑法あたりは効果的です。他方、憲法行政法刑事訴訟法あたりは過去問依存度が高い(司法試験過去問のみでも網羅性が高い)ため重要性は低いです。)

 短文事例演習を使う2つのフェーズについて、はこちらも参考にしてみてください。
piropirorin0722.hatenablog.com

 網羅性の獲得に関しては、予備試験過去問を活用することも考えられます。
 予備試験受験生以外は、司法試験過去問を潰した後に、過去問依存度の低い(司法試験過去問のみでは論点を網羅しきれない)科目はもちろん、過去問依存度が高い(司法試験過去問のみでも網羅性が高い)科目であっても、網羅性をより高めるために、予備試験過去問を解くことが望ましいです。
 予備試験で問われた論点が、後に司法試験で問われるということもあります。例えば、会計帳簿閲覧請求(会社法433条1項)について、平成25年予備試験、平成30年司法試験など。

 ⑹ 答練・模試は?
 作成に関わった経験がある一個人の見解としては、必須のものではないと考えます。なぜならば、答練・模試のクオリティに司法試験過去問のクオリティが勝るためです。司法試験過去問のエッセンスを使った答練・模試として非常に良い問題があることも事実ですが、司法試験過去問から得られることの方が多いのではないかと思います。

 他方で、答練・模試が不要であるとも言いません。むしろ、相対的な点数で合否が決定される司法試験においては、非常に有用なツールであると言えます。採点によって受験生群の中での相対的立ち位置が把握できることが大きなメリットですし、添削によって自分で気付くことができなかった間違いを指摘してもらうことができることも大きなメリットです。採点に関して、客観的に行われるとは言っても、納得のいかないことがあるのが答練・模試の採点ですよね。これは、点数が高くとも低くともそれほど気にする必要はないです。これはどの予備校でも同じだと思います。ただし、相対的に点数が低かった原因を解消して不合格要因を取り除くという復習は怠らないでください。このような勉強ができること自体もメリットです。
 また、いわゆるヤマ(論点)を知ることができることもメリットです。これは予備校各社によって作り上げられた当該年度の司法試験におけるヤマであり、過去問において問われた回数や試験的又は学術的な重要性等とは無関係に張られたヤマです(もちろんこれらを考慮して作問されることもありますが。)。このヤマについては、予備校各社のシェアの高さに応じて、当該年度の受験生の理解度が相対的に高まります。そのため、仮に司法試験本番で出題された場合に相対的に沈むことのないように少なくとも論点を確認しておくことが望ましという心理になります。不安を解消するという程度であれば、受講する又は何らかの形でヤマを確認することで対応することもできると思います。
 受講後、司法試験過去問や司法試験本番において、配点表の想起するような心がけができるようになります。濃淡を付けなかったり、不必要に冗長な論述にならないようにすることも大切です。配点との関係については、こちらのブログの③と④の視点を参考にしてみてください。
piropirorin0722.hatenablog.com

 どんな答練・模試があるのでしょうか。
 辰巳スタンダード論文答練や辰巳全国模試は、値段が結構高いことが個人的にはデメリットでした。しかし、採点表が細かく設定されているため、採点者の裁量は低く、客観的な点数が明らかになることがメリットだと思います。自己採点も可能なくらいです。
 伊藤塾ペースメーカー答練やTKC模試は、辰巳に比べて値段が比較的安いことが個人的にはメリットでした。しかし、採点表は辰巳に比べてざっくりと設定されているため、採点者の裁量が高く、点数がブレることがあることがデメリットだと思います。そのため、自己採点は難しいと思います。

3 おわりに
 上に書いたプロセスが必ず正解ということはないでしょう。
 自分の失敗も踏まえて、今だったらこういうプロセスで勉強するかなというものです。
 万人不変の勉強プロセスがあるとは思いません。自身の足りないところを補うと勉強と続けていくことが必要だと思います。プロセスを真似るのも良し、特定のプロセスで参考になる視点があればそれを採用するのも良し。何か1つでも勉強計画の参考になれば幸いです。

答案何頁書いた?(基本7科目における2時間の使い方)

1 はじめに

 あなたは友人との間で「答案何頁書いた?」というやり取りをしたことがあるのではないでしょうか。

 司法試験で答案を書くとき、答案構成の時間はどのくらいにするべきか、何頁書くべきかという議論をよく耳にします。このような指針はあくまで「べき」論であって、必ずこうしなければならないというものではないと思います。

 他方で、自身の暴走を抑制するルール作りとして、また、いかに効率よく点を稼ぐかというスタンスとして、このような指針は大変有用であると思います。
 また、答案構成の時間が短ければ短いほど、答案を書く時間を長く確保することができ、それに伴って通常は書くことのできる文字数が増えるはずです。他にも、文字を書く時間が早ければ早いほど、書くことのできる文字数を増やすことができるでしょう。

 本記事は、頁数ではなく、文字数にこだわる意識を持っていただくために書くことにしました。2時間という受験生に平等に与えられた試験時間の使い方について、受験生の皆さんに是非一度考えてみていただきたいです。
 単なる何頁書いた自慢になってしまっていないか、2以下を読んでチェックしてみてください。

 なお、答案構成なんて不要だ!と言われることがあるかもしれませんが、あれは結構特殊かと思います。自分も、答案構成用紙を使うことはほとんどないですが、問題用紙の余白部分に人物相関図や時系列を書いたり、問題文それ自体にマーカーを引いたりという作業をしています。これもれっきとした答案構成ですよね。

2 事前に確認すべきこと

 まず、答案用紙について考えてみましょう。
 司法試験の答案用紙は1頁が23行で8枚です。ここで何頁書く「べき」とかいう議論が出てくるわけです。
 ここで確認しておくべきことは、①答案用紙1行に書いている文字数です。これが異なれば単に頁数が多いとか少ないとかを比較しても意味がありませんよね。
 例えば、自分の場合は、答案用紙1行に20から25文字、1頁に460から575文字(ナンバリングや改行も考えると1頁に500文字)くらいで書きます。

 次に、答案構成について考えてみましょう。
 当たり前ですが、試験問題と試験時間は平等に与えられています。
 ここで確認しておくべきことは、②答案用紙1頁を書くために要する時間(筆力と表現されることもあるかと思います。)です。②=答案用紙1行に書いている文字数(①)×23行です。
 例えば、自分の場合は、1頁13から15分くらいかかります(友人は10から12分くらいで書いており、相対的に遅かったです)。なお、科目により異なると思います。
 最低限確保したいと思っている頁数の時間は確実に残しつつ、答案構成の時間を考えなければなりません。

3 逆算して実践する(答案を書く際に意識すべきこと)

 上記①及び②を念頭に置くと、答案構成に充てることのできる時間が限られてくることがわかります。
 例えば、自分の場合、最低限3000文字(6頁)は書く「べき」と考え、そのためには78から90分を確保しなければならず、残された30から42分を答案構成に充てることができます。

 他方で、科目によって、又はその難度によって、上記方針が奏功しない場合があり得ます。
 例えば、自分の場合、行政法について、会議録や関係法令の把握に50から55分といった多くの時間を充てざるを得ないことがあり、残された65から70分で答案を書かざるを得ない状況に陥ります。その場合にはそれに応じて方針を修正する必要があるでしょう。
 (当初の方針に従う場合はもちろん)方針を修正した場合に特に意識すべきことは、③配点との関係です。
 最後の問題を書いている途中で試験終了なんてことはほんとにもったいないです。自分は、配点との関係で頁数を配分するというのをよくやっていました。
 なお、刑事訴訟法などの設問毎に配点が明示されない科目については、各設問に関する事実の量によって配点をある程度予想することができるでしょう。

 また、答案を書く際に強烈に意識すべきことは、④自分が書いた文字数がどれくらい加点の対象になるかです。
 同じ理解の内容が採点者に伝わるのであれば、文字数が少ないに越したことはありません。そこで浮いた時間を他に充てることができます。文章を書く際には、貪欲に密度を意識しましょう。不必要に問題文を引き写している時間などありません。
 ここでは設問毎の配点(③)だけでなく、当該設問における論点毎の重要度との関係を意識する必要もあるでしょう。事前準備として論証を記憶する段階から(も)意識しておく必要があります。
以上

【再現答案】令和元年(平成31年)司法試験 労働法(集団的労働関係) 60

1 再現答案 2587文字

第1 設問1
1 機関
 ⑴ 労働委員会に対して、ビラ撤去が労働組合法(以下省略)7条1号及び3号に当たることを理由に、救済を「申立て」(27条1項)、ポストノーティス命令の発令を求める。
 ⑵ 裁判所に対して、ビラ撤去の無効確認及びこれを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をする。
2 救済
 ⑴ 7条1号
  ア 撤去を行ったのは「使用者」(柱書)たるY社である。
  イ 「正当な行為」とは、主体・目的・態様の正当であることをいう。
    本件では、同ビラはⅩ組合員に状況報告をするためになされたものであり、同組員が行ったものと考えられ、主体は正当である。
    目的は、先立つ団体交渉にYが応じなかったことに対する状況報告としてなされたものである。同団体交渉は、X組合員Aの賞与査定という労働条件その他の待遇について、かつ使用者が処分可能である義務的団交事項であるから、Yはこれに応じる必要がある。そうすると、これに理由なく応じなかったことを、組合員に状況報告する必要があり、目的も正当である。
    態様について、使用者は施設管理権を有するため、利用拒否につき権利の濫用がない限り、正当性は否定される。たしかに、ビラの内容は「隠蔽」という強い文言を用いている。しかし、正当な理由なく団体交渉を拒否した事実を主たる内容としている。また掲示場所は本件労働協約に従っている。そのため、本件労働協約28条が禁止する「会社の信用を傷つけ」「職場規律を乱す」とはいえない。したがって、Yとしてはビラ掲示を認めるべきであり、利用拒否は不当な団体交渉を理由とする権利濫用に当たるため、態様の正当性はある。
    よって、「正当な行為」である。
  ウ これに対して、ビラ撤去という「不利益な取扱い」がなされた。
  エ 「故をもって」とは、反組合的意図をいう。
    本件では、先立つ団体交渉拒否の理由を述べることなく、前述の通り正当な活動に対してビラ撤去がなされており、反組合的意図が推認される。
  オ よって、7条1号に当たる。
 ⑵ 7条3号
  ア 「支配…介入」とは、組合弱体化措置をいう。
    本件では、上記正当な活動に対してビラ撤去が行われている。このような撤去行為はX組合の組織運営を害するものであるから、組合弱体化措置といえ、「支配…介入」に当たる。
  イ 1号と異なり、「故をもって」の文言がないが、帰責の根拠として必要であり、反組合的意思で足りる。
    本件では、ビラの内容やビラ撤去が特段の理由もなく行われたものであることからすると、反組合的意思が推認される。
  ウ よって、7条3号に当たる。
 ⑶ 不法行為
   X組合の団体権が「侵害」され無形的「損害」が生じているため、Y社は損害賠償責任を負う。
3 以上より、X組合の申立て及び請求は認められる。
第2 設問2
1 機関
 ⑴ 労働委員会に対して、チェックオフ中止が7条1号及び3号に当たることを理由に、救済を「申立て」、ポストノーティス命令及びチェックオフ継続命令の発令を求める。
 ⑵ 裁判所に対して、チェックオフ中止の違法確認及びこれを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をする。
2 救済
 ⑴ 7条1号
  ア チェックオフ中止を行うのは「使用者」(柱書)たるY社である。
  イ 「正当な行為」とは、主体・目的・態様の正当であることをいう。
    本件では、既に団体交渉において合意に至らなかったものであるが、これは前述の通りY社が義務的団交事項について交渉に応じないという姿勢をとったためである。また、前述と同様に、先立つビラ掲示行為は主体・目的・態様において正当な行為である。
    したがって、「正当な行為」といえる。
  ウ これに対して、チェックオフ中止という「不利益な取扱い」がなされる。
  エ 「故をもって」とは、反組合的意図をいう。
    本件では、団体交渉拒否の理由を述べることなく、前述の通り正当な活動に対してチェックオフ中止がなされており、反組合的意図が推認される。
  オ よって、7条1号に当たる。
 ⑵ 7条3号
  ア 「支配…介入」とは、組合弱体化措置をいう。
    本件では、上記正当な活動に対してチェックオフ中止が行われる。たしかにチェックオフ中止は「期間の定めのない労働協約」の「解約」であり、15条3項に基づくものであり、適法とも思える。しかし、チェックオフ中止は組合員の便宜の中止を意味し、X組合の組織運営を害するものであるから、組合弱体化措置といえ、「支配…介入」に当たる。
  イ 1号と異なり、「故をもって」の文言がないが、帰責の根拠として必要であり、反組合的意思で足りる。
    本件では、チェックオフ中止が特段の理由もなく行われたものであることからすると、反組合的意思が推認される。
  ウ よって、7条3号に当たる。
 ⑶ チェックオフ継続命令についての救済命令の限界
  ア 救済命令は労働委員会の裁量に基づき発令されるものである。また、救済命令の趣旨は違法状態の除去、適正な労使関係の回復である。
    そのため、趣旨に反する救済命令は、裁量の逸脱濫用として違法であると解される。
  イ ここで、チェックオフ協定とは、組合員が所属組合との間に負う組合費納入義務を前提に、使用者と組合等との間に締結される取立委任契約である。使用者が労働者の賃金を一部控除するため労働基準法24条1項本文の適用を受け、同但書の「協定」として免罰的効力を有するものである。
    チェックオフ中止は、使用者と労働者との間の支払委任契約(民法643条)にかかわらず、チェックオフ協定を解約することにより、チェックオフによる労働者の便宜を中止することを意味する。そのため、違法状態の是正として、ポストノーティス命令の発令が適している。他方で、チェックオフ継続命令を発令した場合、一応適法に解約されたチェックオフ協定が存在であるにもかかわらず、本来使用者と組合等との間で締結されるはずの同協定が存在する状態を作出することになる。また、同協定が不存在の状況において、チェックオフをすることは免罰的効力に反するという労働基準法24条1項に反する状態といえる。
   したがって、チェックオフ継続命令の発令ついては、救済命令の趣旨に反し、裁量権の逸脱濫用として違法であるといえる。
 ⑶ 不法行為
   X組合の団体権が「侵害」され無形的「損害」が生じているため、Y社は損害賠償責任を負う。また、28条違反の行為として無効である。
3 以上より、X組合の申立て(ポストノーティス命令の限度)及び請求は認められる。
以上

2 分析 ※太文字は試験中の思考

設問1
 本件労働協約29条に基づくビラ撤去の適法性について、オリエンタルモーター事件最判平成7年9月8日)が想起された。同29条は、同28条を前提としているため、同28条の解釈の枠で論じることが必要だと思った。もっとも、かかる観点を、想起した前記判例と上手く関連付けて論じることができなかった(出題趣旨32頁によれば、同27条に基づき掲示板を利用し、同28条及び29条に基づいて撤去したというものであり、やはり労働協約の解釈・適用の問題でした。)。
 なお、ビラ掲示の正当性を検討するか、ビラ撤去の適法性を検討するかについては、内容的に重なるところが多いため、どちらでも良いと思った(前述のとおり、労働協約の撤去要件の検討をすることが求められていたのであり、組合活動の正当性として論じたり、施設管理権の問題として論じたりすることは求められていませんでした。この辺は論じ方が結構悩ましいですね。)
 労組法7条1号と3号は同時に問題となることが多く、併記するように努めた。たしかに、1号と3号が同時に問題となり得るという視点自体は誤りではありませんが、ビラ撤去が問題となっている本問のような事例では1号は問題となりません。1号を検討するのは典型的には懲戒処分や人事権の行使が行われた場合であるといえるでしょう。出題趣旨32頁では、本問では、3号のみが問題となることが明確にされています。
 本件労働協約28条及び29条の解釈に当たって、本件労働協約51条を考慮することが必要となります。これは、同条が委員会自体を「非公開」とし、「委員会の委員及び関係者…は、苦情処理に関して知り得た秘密を漏らしてはならない」としていること、問題文においてX組合が「苦情処理委員会におけるY社の主張を紹介した上で」自己の主張を記載していること(なお、Aの主張は記載していないよう)等の誘導からすれば、このように考えるのが自然であると思います。かかる観点を検討できていない再現答案は、事案の特殊性を論じることができずに失点していると思われます。上司のセクハラ行為やY社の隠匿行為についての記載は、本件労働協約51条に違反するものですし、事実確認が不十分の中で行う表現としては真実性についても明確な根拠に基づくものとは言い難いでしょう。他方で、賞与の変動部分をゼロと査定した行為についての記載は、上司のヒアリングのみしか行われていない状況においては、不当と表現することにも一応の理由があるといえるでしょう。さらに言えば、後者については、義務的団交事項に当たるわけですから、当事者間で合意した苦情処理委員会で団交を行うことになっているわけですから、同委員会で誠実な交渉を行わなければならないとこと、上司のヒアリングのみを行い、十分な説明を来なっていないなど団交拒否と評価し得る態様です。そうすると、比較の視点からしても、前者と後者で結論を分けるという評価もありでしょう。ただし、この場合には、結局のところビラ撤去が全体として撤去要件を充たしているといえるのか否かを判断し、また全体として支配介入に当たるといえるのか否かを結論付ける必要があるでしょう。

設問2
 問題文で「Y社が、…実際にチェックオフを中止した場合」についての救済が問われているから、X労働組合としては、チェックオフによって労働者が得る便宜が減縮されたとして、これを争っているものと思われる。そのため、チェックオフ中止の適法性(90日前予告解約(労組法15条3項4項)→支配介入該当性(肯定)という流れについては、採点実感33頁では前者の有効性と後者の該当性を直結させて理解する誤りが指摘されており、これを峻別できただけで「高く評価」されたようです。ラッキー。支配介入は適法な行為についても成立し得るということを頭に入れておきましょう!ただし、再現答案では、解約について労組法15条3項は指摘している一方で、90日の予告に関する同条4項の指摘をできていないので、条文は引用漏れがないように注意しましょう。)→救済命令の限界(違法であることを前提として再びチェックオフ協定を締結している状態に回復させる内容の救済を求めることができるか)の順で論じようと思った。後者については、ネスレ日本事件(平成7年2月23日)が想起された(ここは採点実感34頁によれば「加点」されたようです。)。設問1と同様不当労働行為該当性が問題となることは間違いないが、メインは救済命令の濫用の有無だと思った(救済命令の濫用の有無がメインだったというのは少し疑問です。設問2の支配介入該当性について、設問1のビラ撤去までの経緯等とリンクする部分があるので、そういう意味では設問1がメインだったという言い方もできるのかもしれません。)
 まず、設問1に引き続き、設問2においても、1号該当性を検討してしまっている点で印象が良くありません。3号該当性の検討だけで足りました。こういう所で余計なこと記述してしまうと、印象が悪いというだけでなく、(仮に無益的記載事項として不利に捉えられないとしても)時間と紙面の無駄遣いとなり論じるべき点が相対的に薄くなってしまいますので注意しましょう。
 本問は、支配介入該当性の枠の中で労働者の情状や使用者落ち度を考慮する問題であったようです。Y社のチェックオフ中止行為を行った理由、経緯や手続、結果の不利益性等を考慮して論じることが重要だったといえるでしょう。確かにこのように考えないと、問題文中の事情を使いきれないかもしれません。
 最後に、司法試験では採点実感で誤りと指摘されたことが翌年~数年後に再度問われるということがざらにあります。特にそれが基本的な事項であればよりその傾向は顕著であると思われます。採点実感33頁では「余後効」について同様の指摘がされています。同論点については、答練でもよく出るところではありますが、これを機にしっかり復習しておいた方が良いと思います。なお、平成24年司法試験採点実感で誤って「ロックアウト」と書いた答案があったと苦言が呈されていたのですが、翌平成25年司法試験で出題されているんですよね。

敗因分析の仕方

1 敗因分析って何をすればいいの?

 そもそも敗因分析によって何を得ようとしているのでしょうか。
 自分は客観と主観のズレを認識することを目的としていました。

⑴ 再現答案の早期作成のすすめ

  覚えている方がいるかわかりませんが、令和3年司法試験が終了した令和3年(2021年)5月16日に、再現答案の早期作成をおすすめするツイートをしておりました。


  これはどういう趣旨だったかというと、客観と主観のズレを認識するという目的に対して、再現答案の分析こそが敗因分析1つの手段であり、その手段を採るための材料を確保しておいて欲しいということでした。

  再現答案には、不理解・理解不足、検討順序等の流れの悪さ、問いに答えていない等といった問題点が露になっています。
  そして、再現答案の早期作成をおすすめしていたのは、良くも悪くも記憶が鮮明なうちに問題点を書面化して欲しいからでした。書面化してしまえば、例えば、作成時に不理解・理解不足があった部分について試験中には正しく書いていたはずだと記憶を改ざんすることはできませんし、問いに答えていなかったという部分について試験中にはちゃんと答えていたはずだと言い訳することもできません。
  不合格直後に再現答案を見てみると、問題点の多さにテンションは下がることは必至ですが、自分の客観的実力を目の当たりにすることができるでしょう。まさに再現答案は鮮度が命です。自分の場合は、試験終了翌日から作成していました2~3日かけて作成していました。お金にもなりますし。


  試験終了後に予備校の速報を聞いた後や不合格後に事案を想起して作成するのではなく、早期作成です。

⑵ 合格者に再現答案を見てもらおう

  再現答案を自分で見ることもあると思います。

  他方で、自分の客観的実力を明らかにするためには、自分の視点からだけではなく、より客観的な第三者の視点が有用です。
  就活とかでも使うことがあるジョハリの窓の4つの区分に従えば、合格者に再現答案を見てもらうことで、自分は気づいていないが他人は知っていること(盲点)、すなわち問題点が明らかになります。
  合格者のコメントにより、自分の客観的実力が、より鮮明に見えてきます。特に当該年度の合格者ならば、悩ましい部分についてどう書いたのか、難しい部分と簡単な部分の濃淡をどのように付けたのか等の経験をもってコメントをしてくれることでしょう。

  先ほど書いたとおり、再現答案には良くも悪くも問題点が露になっていますので、不合格となった自分の答案を見せることに消極的になる方もいるかもしれませんが、そこはプライドを捨ててください!
  既に目標は来年の司法試験合格に切り替わっています。問題点はあくまでも令和3年の司法試験時点のものにすぎず、当面の課題はその問題点をどのように克服するかということです。
  当該年度の合格者は、テンションが上がっている方、自身に満ち溢れている方が多く、お願いすれば引き受けてもらえることが多いと思います。

  結果発表が令和3年9月7日なので、9月いっぱいを敗因分析に使っても使いすぎということはないと思います。

⑶ セルフチェックをしてみよう

  前述しましたが、再現答案を自分で見ることもやってみましょう。

  不合格という結果を受け、自分に自信が持てなくなっている方もいるかと思います。
  現実的には、採点実感が出されるのを待ってこれを参照しながら、まず、誤りであるとされている部分や低く評価するとされている部分が、自分の答案に当てはまるのかを確認してみましょう。
  次に、当該年度の一定の水準とされているレベルに達しているのかを確認しましょう。近年の出題趣旨及び採点実感はかなり詳細に書かれていますから、どこで検討を漏らしているために、優秀に属する答案・良好に属する答案・一応の水準に属する答案ではなく、不良に属する答案になってしまっているのかが比較的わかりやすいと思います。

2 敗因

 合格者の視点も借りて自分の問題点が明らかになったと思います。

 自分の場合、以下のとおり気付かされた点は大きく分けて3つくらいでした。
 ⑴ 三段論法の不徹底
  特に初学者の頃に多いと思いますが、そもそも答案作成力が乏しい、規範・あてはめ・結論という流れができていないということです。非常に印象が悪いです。
  条文からスタートできていないとか、いわゆる論点主義に陥り唐突に論点の論証を始め、論パを長々と吐き出してしまうなどです。条文文言と事実の間に距離があるからこそ、条文の解釈・事実の評価を通じてその距離を縮めるということを全く意識していないとか。
  もちろん重要度に応じて三段論法を一行で書くこともあり得ますので、その辺の感覚も掴むことができればいいと思います。

 ⑵ 基本的事項の不理解・理解不足、演習不足
  規範部分や理由付けに不理解・理解不足があることもあります。規範部分が間違っていれば、あてはめも間違ってきてしまうはずです。多くの受験生が書ける基本的事項に間違いがある場合、それは大きく評価が沈むことになります。
  翻って言えば、過去に何度も出題されている論点、焼き増しされた論点に対応できないということは、司法試験過去問を「潰した」といえる状態ではなかった(「潰した」ついては、以下の記事の「プロセス③」も参考にしてみてください)といえ、演習不足が否めません。
piropirorin0722.hatenablog.com

 ⑶ 「問いに答えていない」
  よく合格者から言われるのは、「問いに答えていない」ということです。
  これって一体どういうことなんでしょうか。

  形式面では、こんなことが想定されます。
  例えば、令和2年司法試験刑法設問1「以下の①及び②の双方に言及した上で、【事例1】における甲のBに対する罪責について論じなさい(特別法違反の点は除く。また、本件債権に係る利息及び遅延損害金については考慮する必要はない。)」という問いでした。
  このような問いであれば、①及び②の各立場からの説明(「言及」)、甲のBに対する罪責の検討(「罪責について論じなさい」)を解答することが必須となってきます。前者は令和元年の問い方とほぼ同じですから、私見を書き忘れたのであれば、過去問をしっかりやっていたのか疑わしいです(もちろんその場で考えても私見が必要なことは明らかですが)。問われていることに対する解答を忘れないための対策をどうするかを考えましょう。他方で、これも当たり前ですが、甲のBに対する罪責以外を検討しない、特別法違反を検討しない、本件債権に係る利息及び遅延損害金を考慮しないことも必要です。途中答案を避けるためにも重要となります。

  実質面では、こんなことが想定されます。
  事案の分析をした結果、論点を落としてしまっていることがあるかもしれません。理論的には流れの中で出てくるはずの論点を検討していないとすれば、それは基本的事項の特に理論面に不理解・理解不足という原因があるかもしれません。
  不要な論点を検討してしまっていること又は重要でない部分について冗長に検討してしまっていること(相対的に重要な部分の検討が疎かになってしまっていること)があるかもしれません。なぜ不要な論点を検討してしまったのか又はなぜ重要でない部分について冗長に検討してしまったのかを考えましょう。どの事実からそう判断してしまったのか、どうすれば次に避けられるのかを考えましょう。
  司法試験に特有のひねりに対応できていない、つまるところ基本と応用、原則と例外の峻別ができていないということもあるかもしれません。それが基本判例や基本的事項であるとすれば、なぜ考慮することができなかったのかを考えましょう。
  事案の特殊性を捉えられていないとか問題文の事情を使わずに自分の知識や知っている事案に引き寄せてしまっているということがあるかもしれません。

  「問いに答えていない」という指摘は、正直に言って少し不親切なんですよね。
  「問いに答えていない」と言われたら、それはどういう趣旨で言っているのか、具体的にはどういうことなのか、よく聞いて確認するようにしてください。内容によって、対策が変わってくるはずです。

3 分析・対策

 試験対策として答案を書くことは必要だと思います。多くの方が数多くの答案を書いてきたと思います。数をこなせば、答案の流れを掴み、筆力も上がります。
 ただ、基本的事項が不理解・理解不足のままに答案を書いても学習効果が低いと思います。自分で気付いた又は合格者から指摘された基本的事項の不理解・理解不足については、奢らずに再確認しましょう。
 
 記憶の過程とは、覚える(符号化)、覚えておく(貯蔵)、思い出す(検索)という3つの段階に分かれるといわれています。
 特に基本的事項については、既存の知識に、新しく入ってきた情報を付け加えて詳しくする(精緻化する)ことで、覚える効率が上がるといわれています。
 また、試験対策としての記憶というのは、意識的想起を必要とする顕在記憶と呼ばれるものです。そのため、覚える段階で、単に情報を見たり、書いたりするだけでなく、その情報をイメージ化するなど意味的に深い処理を経験しておくことにより、メモリーツリーのように各情報を関連付けて覚えておくことができことができ、思い出す際のスピートや正確性が上がるといわれています。

 もうしばらくすれば、科目毎に答案の評価が返ってくるはずです。司法試験員会採点員の採点によって客観的実力が如実に明らかになりますが、具体的にここは出来ているが、ここは出来ていないということは具体的には知り得ません。そのため、やはり合格者に答案を見てもらうということが必要になります。
 是非苦手な科目・評価が悪かった科目を克服する勉強に軸を置いてみてください。苦手な科目・評価が悪かった科目を一定の水準に引き上げる方が簡単です。
 得意な科目・評価の良かった科目を伸ばすために、様々な基本書・学術論文・コンメンタールを読んでというのは効率が悪いです。得意な科目・評価の良かった科目は、一定の水準をクリアしているわけですから、相対的に勉強の必要は低くなってきます。もちろん当該年度との相性などもありますので、全く勉強しなくていいわけではありません。あくまで濃淡の話です。

 優先度を考えた勉強をしましょう。
 これは科目毎の話にとどまりません。重要論点を完璧にしましょう。行政法なら、処分性・原告適格・裁量、刑訴法なら、強制処分の適法性・任意処分の適法性・伝聞法則などです。
 自分の場合、司法試験過去問を科目別論点別にできるだけ連続して解くという方法も試してみました。

4 リスタートに向けて

 冒頭に書いたとおり、9月いっぱいを敗因分析に使っても使いすぎということはないといいましたが、自分の場合は、同時進行で、論パをクルクル回し、短答の出題判例をチェックした判例六法を眺めて記憶を取り戻していました。
 特に勉強を継続していなかった方にあっては、司法試験受験から約4か月で思った以上に記憶は抜けてしまっているはずです。

 喜ばしいことですがともに勉強した仲間が無事に合格し、一方で一緒に勉強する友人がいなくなってしまったという方がいるかもしれません。また、思うように学習時間を確保できない方や学習施設を利用できないという方もいるかもしれません。
 そのような中で、今この記事にたどり着き、リスタートを検討しているリベンジャーズを大変尊敬します。そして来年こそは合格するという覚悟を決めたのなら、適切な敗因分析を経た後、長期・中期・短期の計画を立て、リスタートをしていただきたいです。是非合格を勝ち取ってください。
 もちろん休憩も忘れずに。