起案時の手控え(法制執務用語)
1 特に起案時や文章作成時に気にするところは以下の通りです。
⑴ 「及び」「並びに」
ア 「及び」
A、B及びC
(体言ではなく、用言をつなぐときはA、B、及びC)
イ レベルが異なる場合
A並びにb1及びb2
(「及び」は一番小さいレベルに1回だけ、「並びに」はそれより大きいレベル全てに)
⑵ 「又は」「若しくは」
ア 「又は」
A、B又はC
(体言ではなく、用言をつなぐときはA、B、又はC)
イ レベルが異なる場合
A又はb1若しくはb2
(「又は」は一番大きいレベルに1回だけ、「若しくは」はそれより小さいレベル全てに)
(例えば、「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者をいう。)
⑶ 「その他」「その他の」
ア 「その他」は、前後が並列
イ 「その他の」は、前に置かれた語句は、後ろに続く語句の例示
(例外として、日本国憲法21条1項「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」は、「その他」の前に置かれた語句は、一切の表現の自由の例示ですから、本来は「その他の」が正しいはずです。語呂・語感との関係で「その他」とされていると説明されます。)
⑷ 「場合」「とき」「時」
ア 仮定的条件を示す「場合」「とき」は、語呂・語感が優先
(例外として、2つの仮定的条件を重ねる場合には、例えば、Aの「場合」において…と認める「とき」の順となります。)
イ 漢字の「時」は、ある時点を瞬間的に捉えて押さえる場合
⑸ 「以前」「前」「以後」「後」
ア 含む
「以前」・「以後」は、基準となる時点を含んで、それより前・後への時間的広がりがあることを示す
イ 含まない
「前」・「後」は、基準となる時点を含まないで、それより前・後への時間的広がりがあることを示す
⑹ 「以上」「超」「超える」「以下」「未満」「満たない」
ア 含む
「以上」・「以下」は、基準となる数量や期間を含んで、それより多い又は長い場合並びに少ない又は短い場合を示す
イ 含まない
「超」「超える」・「未満」「満たない」は、基準となる数量や期間を含まないで、それより多い又は長い場合並びに少ない又は短い場合を示す
2 参考文献
法制執務用語研究会『条文の読み方』(有斐閣、第2版、2021年)には、上記以外にも法令や文章を読む際にためになることが書かれています。コンパクトだしかなりお安い。
- 作者:法制執務・法令用語研究会
- 発売日: 2021/03/24
- メディア: 単行本
また、実は大島義則『憲法ガールⅡ』25-26頁(法律文化社、初版、2018年)でロキ先生が一部を解説してくれています。ありがたいしお得です。