答案の落とし所

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【再現答案】令和2年司法試験 民法 B評価

1 再現答案 3608文字
第1 設問1
 1 Cの主張
  ⑴ AはBに対し6000万円で甲土地及び乙建物を売った(民法(以下省略)555条、契約①)。既に契約①に対する1000万円の弁済を受けているため、5000万円の残代金請求権を有する。
  ⑵ CはAから上記残代金請求権の譲渡を受け(466条1項本文)、債権者Aが債務者Bに対して「通知」をしているため、CはBに対して債権譲渡を対抗できる(467条1項)。
 2 Bの支払額を少なくする主張及びその当否
  ⑴ 契約①の目的物である乙建物が防音性能を備えていなかったため、引渡された目的物の「品質」が「契約内容に適合しない」(562条1項本文)とすれば、代金減額請求権を有する(563条1項)。またこの場合には、損害賠償請求権をも有する(564条、415条1項)。
Bとしては、両債権を自働債権として相殺することになる(505条1項本文、506条1項前段)。
  ⑵ 本問では、契約①において、乙建物が特に優れた防音性能を備えた物件であることが合意の内容とされていた。もっとも、乙建物は合意された防音性能を備えていないことが判明した。そのため、契約①の乙建物について「品質」が「契約内容に適合しない」といえる。
   そして、BはAに対して費用の負担又は工事の手配を求めたが、未だAから応答がないため、「相当の期間を定めて履行の催告をし」たにもかかわらず「履行の追完がない」といえるため、代金減額請求権を有する。
   また、Aは防音性能を備えていない乙建物を引渡しているから「債務の本旨に従った履行をしない」といえ、同性能を欠く部分については通常無価値といえるから、Bは損害賠償請求権を有する。
  ⑶ そして、上記両債権と残代金請求権には債権対立があるため、相殺が認められるとも思える。
  ⑷ もっとも、Bが上記両債権を取得したのは令和2年10月10日であり、Cが対抗要件を具備したのは同年7月30日であるから、「対抗要件具備時よりも前に取得した譲渡人に対する債権」とはいえない(469条1項)。では、対抗要件具備時より「前の原因」に基づいて生じた債権(同条2項1号)として相殺が許されないか。
    同条が例外的に相殺を認める趣旨は、対抗要件具備よりも後に取得した債権であっても、相殺に対する期待があったのであれば保護すべきだからである。
    そこで、対抗要件具備よりも前に自動債権を発生させる基礎となるべき事情が存在すれば「前の原因」といえると解される。
    本問では、契約①の目的物たる乙建物の契約不適合によって自働債権が発生している。もっとも、近隣住民がBに対して述べた苦情によると以前Aとの間でも同様のトラブルがあったというのであり、かかる契約不適合は、契約①が締結する以前から存在していたといえる。そのため、Cの対抗要件具備よりも前に自働債権を発生させる基礎となるべき事情が存在していたといえ、「前の原因」といえる。
    したがって、Bは両債権を自働債権として相殺を行うことができる。
第2 設問2小問⑴
 1 ㋐のB発言及びa部分
  ⑴ 地役権の設定を前提としていないため、Bは、213条2項、1項により無償でa部分を通行する権利があると主張する。
  ⑵ 甲土地は、一筆であったD所有地を分割することによって丙土地の袋地となった。
    そのため、甲土地をDから買ったAには上記権利が認められる。そして、甲土地をAから買ったBに上記権利が認められる。公道に至るためには、少なくともa部分を通行することが必要となるため、Bは上記権利に基づきa部分を通行することができる。
 2 ㋐のB発言及びc部分
  ⑴ 上記権利によりc部分まで通行する権利があると主張する。
  ⑵ 上記権利は「必要」かつ「他の土地のために損害が最も少ないもの」でなければならない。
   たしかに、Bは自家用車を購入しており同車両の通行にはc部分まで通行することが「必要」といえる。しかし、c部分まで通行することなくとも、徒歩であればa部分のみを通行することによって行動に至ることができる。そのため、c部分まで通行することは「他の土地のために損害が最も少ないもの」とはいえない。
   したがって、上記権利に基づいてもc部分まで通行することはできない。
第3 設問2小問⑵
 1 ㋑のB発言
  ⑴ Bは解除制度の趣旨を、契約関係からの解放であるとの理解を基礎としているものと考えられる。
  ⑵ 地役権は物権であるから、契約②によって、DはBの丙土地の通行を受忍すれば足りるのであり、何ら履行すべき義務を負うものではない。そのため、Dが解放されると望む債務が存在しないため、解除を認める必要性がない。
 2 ㋒のD発言
  ⑴ Dは解除制度の趣旨を、債務不履行に帰責事由が存在する場合に契約関係を解消するものであるとの理解を基礎としているものと考えられる。
  ⑵ 契約②によって、DはBに対して丙土地を通行させる義務を負い、他方Bは年2万円を支払う義務を負う。そして、Bは債務を履行していないため、債務不履行につき帰責事由が存在する。そのため、Dはこれを理由として契約②を解除することができる。
 3 私見
  ⑴ 解除制度の趣旨は、契約関係からの解放である。現行法は債務者の帰責事由を要件とはしていないからである。
  ⑵ そして、契約②によって、DもBに対して丙土地を通行させる義務を負っているといえる。そのため、Bの債務不履行が存際する以上、Dはこれを理由として契約②を解除することができる。
第4 設問3
 1 BのGに対する請求の根拠
  ⑴ Bは、Eの代理人Fとの間で契約した契約③が本人Eに帰属し、これによって生じた所有権移転登記手続債務(560条)をGが相続により承継すると主張する。
  ⑵ 本問において、Fには丁土地売買に関する代理権がないため、Eの追認なき限り、無権代理であり契約③はEに帰属しないのが原則である(113条1項)。
  ⑶ もっとも、761条によって有権代理(99条1項)が成立しないか。
    761条は夫婦の日常家事に関する債務を定める規定であるが、夫婦別産制ゆえに取引をした第三者が害されることのないように、同条は日常家事代理権をも実質的に保障していると考えられる。
    日常家事代理権の範囲は、行為者の目的だけでなく、行為の性質から判断する。
    本問において、Fは契約③によって、夫E所有の丁土地を売却している。たしかに、契約③はEの医療費に充てるつもりであったから、日常家事に当たるとも思える。しかし、一般的に見て、不動産の売買は夫婦の日常家事とは考えられない。
    したがって、有権代理は成立しない。
  ⑷ では、761条を基本代理権として、表見代理(110条類推適用)が成立しないか。
    夫婦別産制を害するため、日常家事代理権への信頼は保護されず、直接適用はできない。
    もっとも、日常家事であるとの信頼は保護されるべきである。
    そこで、当該行為が夫婦の日常家事の範囲内であることにつき善意無過失であれば、表見代理が成立すると解される。
    本問では、契約③に際して、Fは無断で作成したEの委任状及び印鑑登録証明書を提示している。夫婦であれば勝手にこのような書類を準備といえるかもしれない。しかし、入院加療中のEの医療費に充てるつもりであること、親族Gの了解を得ていることを伝えている。そのため、Bとしては、契約③が夫婦で負担すべきEの医療費の捻出という日常家事の範囲内であることにつき疑念を生じさせるような事情は存在しなかったといえる。また、もちろん日常家事の範囲内でないとは考えていなかった。
    したがって、契約③締結行がEFの日常家事の範囲内であることにつき善意無過失であったといえ、表見代理が成立する。
  ⑸ よって、契約③は本人Eに帰属するため、Eは所有権移転登記手続債務を負う。
  ⑹ そして、Eが死亡したことによって、F及びGが上記債務を相続する(882条、896条本文、898条、890条、889条1項2号)。
    もっとも、Fが相続放棄したことによって、上記債務はGのみが負うことになった。
 2 請求の当否
  ⑴ ここで、無権代理人が本人を相続した事例において、判例は、本人の地位及び無権代理人の地位を併有する無権代理人は本人の地位に基づいて追認拒絶をすることが信義則上許されないとする。
  ⑵ 他方で、本問では、本来的には無権代理人であったF及び第三者Gが本人Eを相続している。そのため、Fは信義則上追認拒絶が許されないとしても、Gは追認拒絶を主張することができるのが原則である。
    しかし、本問では、Gは契約③によってBから支払われた400万円のうち200万円を取得している。また、契約③についてEの親族として了解を与えるにとどまらず、契約③締結に際して同席している。さらに、丁土地を不動産業者に売却することにより、先に契約③を締結したBを害することを認識でき、これを認識した上で行っている。
    したがって、このような客観面及び主観面を考慮すると、Gが追認拒絶を主張することは、権利の濫用(1条3項)に当たり許されないといえる。
  ⑶ よって、契約③に基づくBのGに対する所有権移転登記手続請求は認められる。
以上


2 分析 ※太文字は試験中の思考
設問1
・別紙図面を見た瞬間に、ついに通行地役権と時効取得に関する判例が効かれるのかと思ったが、この判例は本問には関係なかった。
・設問1及び設問3はある程度書くべきことが分かったが、設問2の特に小問⑵に関しては法律構成がよくわからなかった。そのため設問1及び設問3に重点を置き、設問2は1頁程度で切り上げようと考えた。
・設問1では、減額の主張を「複数挙げ」ることが求められていたが、相殺しか浮かばなかった。考えても答えがわからなかったので、自働債権が代金減額請求権と損害賠償請求権という2つであるとして主張を「複数挙げ」たという形式だけはそろえたが、自信がない。
よくよく考えると代金減額請求権を自働債権として相殺というのは迂遠なんですかね。代金減額請求権を行使すれば相殺の意思表示なんてものをせずに、代金減額の効果が生じるのでしょうかね。そうすると、相殺の枠で論じる損害賠償請求については469条を論じるとしても、代金減額請求については468条を論じるべきだったのでしょう。
・相殺の論点についても従前から存在していた議論はあるものの、改正によって出現した条文からの問いであると考えたため、比較的丁寧に論じるように努めた。
設問2小問⑴及び小問⑵
・設問2小問⑴では、契約②による地役権設定がなくとも、通行することができる権利が問われているため、囲繞地通行権を論じた。地役権周りで条文を探していたが見つからなかったため少し焦ったが、法定の権利であること、物権であること等から所有権周りで条文を探したら見つけることができた。
・本問では、分筆によって袋地が出現していること、AからBが袋地の譲渡を受けていることから、213条2項1項が適用されるのではないかと思った。これは、現時点で少なくとも月2万円の支払いをしていないBが、a部分について通行する権利を主張するためには、通行に際して支払いを要さないことまでも立論することが必要だと思ったことも理由の一つです。もっとも、210条と213条の適用関係、すなわちいずれが優先的に適用されるのか、213にも211条1項が適用されるのか(「前項の場合には」の前項は210条を指すため)。また、213条で書いたため、210条1項のあてはめを書かなかったが、それでよいのかも気になった。
最判平成18年3月16日(百選Ⅰ70事件、第6版)の総合考慮判断を参考にすると、「甲土地は、鉄道駅から徒歩圏内の住宅地にある」とかいう事情も拾えるみたいですよ。これは判例知らないけど、事実からあてはめに活かすことはできたかもしれないです。
・設問2小問⑴は、よくわからないにもかかわらず(よくわからなかったからこそかもしれないが)、答案構成の時点で想定していたよりも多くの時間と紙面を割いてしまった。もっと書く分量を減らして、設問3に時間を充てたかった。
・問いの「また」前後で2つの誘導がある、すなわちⅰ地役権設定契約の性質とそれを踏まえた契約②の債権債務関係、ⅱ解除制度の趣旨への言及が求められているのだろうと思った。民法改正について②は議論されていたが、①はコイツ(B)何言ってるんですかねという感じ。そもそも2万円支払うと言っていたくせに支払わらず、しまいには2万円支払う必要はないとか…。敢えてこれを法律構成すると囲繞地通行権が物権だからみたいなことを主張するんでしょうか、よくわかりません。考えたこともなかったので、ⅰをさっと流し、ⅱの方で少し論じるという構成にした(具体的には、Bは、物権だからDは通行させる債務を負わない、Dは、通行させる債務の有無は知らんけどBに支払債務の不履行あるから解除できるとしています。
しかし、これは主張がかみ合ってないですよね。注目すべきは支払債務の有無ということなんでしょうから。)。本問は、ⅰで2通り×ⅱで2通り=4通りの考え方があるということでしょうか、それともⅱは契約関係からの解放1通り固定でメイン論点はⅰ(単なる物権契約であるか債権契約的な側面(月2万円支払い)を有する物権契約であるか)だったということでしょうか。仮に後者だとしたら流石にニッチな論点過ぎないですかね。
設問3
・登記移転義務については560条を明示した。560条、522条1項、412条の2第1項等の改正条文は積極的に使っていきたいと考え、事前準備していた。
・本問は、ⅰ日常家事代理及び表見代理類推適用
(しかし、再現答案では、表見代理を成立させてしまっているため、「本来的には無権代理人であったF」と書いたのだと思う。当事者でないEという点がぼやけてしまうため、冷静に表見代理を否定しておくべきだった。)、無権代理人の本人相続(Gとの関係でEの請求が認められるか否か、すなわちEが無権代理人ではないというのが設問3の肝だと思った。しかし、再現答案では表見代理を成立させてしまっている(相続人が移転登記手続債務を負うことが前提とされているなら、被相続人に同債務を負うことは前提だと考えてしまったのか。被相続人に効果帰属させる必要なんてないのに。)。)が問題となる。
・ⅰについては、無権代理→有権代理→表見代理といったように丁寧に論じた。もっとも、110条類推適用のあてはめの辺りはもう少し丁寧に論じたかった。設問2小問⑵を最も早く切り上げておけば、もう少し緻密な分析をして、より丁寧な論述をすることができたはず。ペース配分を誤った。
また、ⅱについて、原則例外パターンと権利濫用で構成した(権利濫用については平成29年の司法試験の採点実感を参照して規範を立てず主観面及び客観面から認定を行った)。ここも時間との関係で十分に論じることができず悔しい思いをした。