答案のおとし所

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抵当権に基づく搬出物の(抵当不動産への)返還請求(平成17年旧司法試験 民法設問2小問2)

(2019.07.05)

1 Twitterアンケート(2019.4.25)

 ①公示の衣説、②善意者取得説が存在し、多くの方が①を採用していると思います。



2 結論

 もっとも、結論として、両説は対立しているわけではないと考えられます。

3 分析

 ①公示の衣説(我妻)
 抵当権の【効力】が搬出物に及ぶことを前提に、搬出された場合には「第三者」(177条)に【「対抗」】することができない。もっとも、背信的悪意者は「第三者」にあたらないため【「対抗」】することができる。
 同説は、抵当権設定者本人(抵当権目的物上の動産の処分権を有する者)が搬出した等対抗関係にある物権変動の場合(松岡久和『担保物権法』51頁(日本評論社、初版、2017年)Case10等)を想定しています。

 そのため、動産の処分権を有しない者が搬出した等対抗関係にない物権変動の場合(青木則幸「判批」別冊ジュリスト237号百選Ⅰ90事件(S57.3.12)(有斐閣、第8版、2018年)等)には、即時取得説による処理が必要になります(工場抵当法の事例に関する同判例の射程が、民法の抵当権に及ぶことを前提とします)。

 ②善意者取得説(星野)
 抵当権の【効力】は、搬出物が第三者に「即時…取得」(192条)されるまで及ぶ。


 以上を簡単にまとめると、いずれの説も搬出物に抵当権の効力が及ぶことは前提としてるのですから、対抗関係がある場合には(背悪でない限り広く)取得者が保護されて、対抗関係がない場合には(即時取得したときに限定的に)取得者が保護される、ということになりそうです。